■健康維持の助けに
【熊本市】「安全・安心な農作元は当たり前。栄養価が高いなどの中身の評価が大事になってきます」と話す、熊本市海路口町でトマト65アールを栽培する「T.K.EVOLUTION FARM」代表の井出謙一<けんいち>さん(57)。ビタミンC含有量が多くなるよう育て、自宅前にトマトの自動販売機を設置するなど工夫している。
井出さんは高校卒業後、旧農林水産省農業者大学校に進学。卒業後はメロンなどを栽培していた実家に就農した。「メロンは嗜好品のため、景気に左右されていました。『トマトならメーンの食材になる!』と確信し、15年前にメロンからトマト8割、米2割の経営にしました」と井出さん。3年前からは、既に就農していた息子の敬夫さん(31)と相談し、米栽培をやめてトマト栽培に専念することを決めた。
栽培する品種は、中玉サイズのオランダ産「ファン・ゴッホ(カンパリ)」と「サンストリーム」、大豆ぐらいの大きさの超ミニトマト「豆とまと」の3品種。それぞれ「赤丸上々」「房丸」「塩とま!」「いちごに恋する夢とま!」「甘とま!」として商標登録した、オリジナルブランドの5種類を栽培している。
海が近い環境を生かし、定植時の灌水<かんすい>以後は水を与えない。干拓地のため、幾つもの「汐の路<しおのみち>」があり、それが自然と土にミネラル豊富な水分を与えるという。
■通常の1.6倍以上のビタミンCを含有
大学と共同で「塩トマト論文」 脂肪肝改善作用など優れる
井出さんの栽培するトマトは、栄養価が高く、ビタミンCは一般のトマトに比べ1.6~3.1倍豊富に含んでいる。「野菜の持つ力で、食べる人の健康維持に貢献したいと思っています」と井出さん。
また、以前から野菜の持つ力を研究していた三重大学と協力し、約6年掛けて「塩トマト論文」を完成させた。「研究によって、『塩とま!』は体重増加や中性脂肪、内臓脂肪の蓄積を抑え、特に脂肪肝改善作用が優れていることが分かりました。身を飾るきらびやかな宝石もすてきですが、ここで厳選されたトマトたちは体の中で輝く宝石です」。井出さんは、健康に貢献できる栄養価の高い農作物こそが、真の価値ある農作物だと考えている。
以前は販売会などに参加していたが「その時間をトマトにかけたい」という思いから、自宅前にトマトの自動販売機を設置している。「自宅前のため、直接お客様と話すことができ、要望なども聞くことができます」。消費者から要望の多かった「トマトジュース」は商品化し、2月下旬から販売を開始。取材当日も来客が絶えない。常連の男性は「ここのトマトのファン!一度食べるとやみつきになるね。いつも買いにくるよ」と話す。
今後については「家族で経営できる、現在の規模を保ちながら反収アップを目指します。消費者の方々においしいトマトの食べ方や味わい方をお伝えしていきたいです」と話してくれた。(田中恭徳・濱田紗矢香)
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