■ハウスイチゴ まきストーブを自作
【阿蘇支局】阿蘇市小野田の西田満士(にしだみつし)さん(59)は2年前から、まきストーブを利用したイチゴ栽培に取り組んでいる。現在、夏はミニトマト15アール、冬はイチゴ10アールを栽培。「1月から2月に気温が氷点下になる阿蘇市では、イチゴ栽培に暖房機は欠かせません」と西田さんは話す。
数年前まではイチゴ40アールを栽培していたが、重油代の高騰で10アールまで減らした西田さん。暖房のコストを下げるために試行錯誤する中、農業関係の雑誌でまきストーブの記事を見つける。
■解体家屋の廃材を燃料に
発生した暖気をロスなく
「自分でもやってみよう」と決心し、記事を参考にまきストーブを完成させた。煙突やストーブのふた、蝶番(ちょうつがい)は購入したが、ドラム缶やほとんどの材料を自宅にあったもので賄った。費用は、材料費と溶接代を合わせて1万円程度だ。
ドラム缶の底には側溝のふたに使われるグレーチングを敷く。まきと底に隙間を作ることで着火を良くし、落ちた灰が最後まで燃える。しかし、ドラム缶は厚みがなく、燃焼を重ねていくうちに底が抜ける恐れがあるため、知り合いの農家から譲り受けた暖房機を改造して新しいまきストーブを作った。
まきストーブのふたにファンを取り付け、空気を取り込むことでさらに着火しやすいように改良。上部にはトタンを30度の傾斜で取り付け、暖まった空気を隣に設置している重油暖房機のファンへ吸い込ませる。「暖まった空気を無駄にすることなく確実にファンへ吸いこませるため、トタンの角度は重要」と西田さん。ファンに吸い込まれた温風は、暖房機のダクトを通じてハウス全体へ送られる。
午後11時に火を入れて、午前7時まで燃焼させる。年間に使用するまきは2トン。家屋を解体した時に出る廃材を利用するので、燃料費はかからない。廃材は乾燥しているため、着火しやすく、火力も強い。なお、排煙によるイチゴやハチへの悪影響はないという。
まきストーブを導入したことで、2014年は重油代を3分の1カットできた。西田さんは「コストカットしても、イチゴの品質や収穫が落ちたら収益も減って意味がありません。品質や収穫に影響しない環境を維持した上でのコストカットでなければいけません」と話す。
まきストーブに火を入れる際は、苗の状態も確認する。「朝、昼、夜と苗の状態は変化します。夜に火を入れに行くため、夜も苗を見渡し状態を確認することができるのがいいですね」。今後については「毎年同じことをしていても面白くないので、管理をきちんとし、いかに収量を上げるかを考えていきたいです」と話してくれた。(岡本聖美・岩下泰子)