■期待のIターン就農者
【鹿本支局】新たな土地へ移り住み就農する「Iターン」と呼ばれる新規就農者が、近年増加傾向にある。サラリーマンとして働きながら、子供のころから家庭菜園などを通して農業に魅力を感じ続けていた川原輝大さん(34)は、県境を越えて山鹿市鹿北町荒平地区で新規就農を果たし、耕作放棄地の再生に力を注ぐ。
■地域の理解と協力を得て
生産部会に参加し技術取得
「大きなクリ、立派なタケノコが収穫できた時はうれしいですね」と話す川原さん。山鹿市鹿北町荒平地区で、耕作放棄地の再生に取り組んでいる。
福岡県筑後市のサラリーマン家庭に育ち、農業に縁のなかった川原さん。幼いころから家庭菜園で野菜を育て収穫することが楽しく、将来は農業で生計を立てたいとの思いが生まれたという。31歳の時に耕作放棄地のことを知り、その耕地を借り受けようと、就農を決め会社を辞めた。
しかし、農業経験が全くない川原さんに農地を貸してくれる農家はなかなか見つからず、ようやくたどり着いたのが鹿北町だった。260アールを借り、タケノコ、クリ、ナスを昨年から生産している。
地域の人は、農具を無償で提供したり、堆肥作りを教えたりと支援を惜しまない。河原さんは「農業経営は思っていた以上に難しく、諦めかけたときもあったが、地域の人や行政、農協の励ましを受け、続けることができた」と振り返る。各生産部会にも参加し、技術の習得に余念がない。
同地区の鬼塚睦夫さん(55)は「増加の一途をたどる耕作放棄地は、単に耕作面積の減少だけでなく、イノシシ害の増加などの問題を生んでいます。川原さんのようなIターン者が果たす役割は大きいですよ」と期待を込める。
今後の計画は「家族が安心して生活できるように、収入を安定させたいです。知識や技術を早く習得し、規模拡大を図っていきたいですね」と意欲的だ。
(牧野かよ子)