【玉名支局】
荒尾市役所農林水産課を退職し、現在「荒尾市オリーブ研究会」(会員50人)で活動する上園満雄さん(65)。市役所勤務時代に市内でオリーブ栽培を推進したのがきっかけで、退職後すぐこの研究会の発足に携わった。同会は1.耕作放棄地の開墾2.オリーブ栽培の普及3.オリーブ生産者の所得向上――を目的としている。
加工・販売まで一貫体制へ
オリーブ栽培のメリットは、1.遊休地や耕作放棄地の利用2.他の作物栽培に比べ軽労働3.生産から加工・販売まで地域に密着した業務ができる――という点だ。同会会員の平均年齢は60歳。上園さんは「みんなもう退職後の60過ぎだし、オリーブ栽培は僕たちに適している」と話す。
苗は本場イタリアから輸入し、現在約10ヘクタールの園地に6千本を植え、5千本の苗を育てている。
指導者招き技術研さん
挿し木や剪定<せんてい>の仕方などは、九州オリーブ普及協会から技術指導を受けている。荒尾市の圃場に指導員を招き、栽培方法や成分の説明、剪定の仕方などを教わる。前回は本場イタリアから剪定師を招き、指導を受けた。
収穫体験に他県の若手も参加
同会では「オリーブ収穫体験」も実施。オリーブは育苗に1~3年、定植して実がなるまでに早くて3~5年かかる。そのため、九州各地から栽培1年目などの若手栽培者が「事前に収穫体験をしたい」と積極的に参加している。
会員の一人、境明彦さんの境オリーブ園で10月15日に行われた収穫体験に参加した、福岡県宗像市の渡辺さん(女性)は、「ロレンツォのオイル/命の詩」という映画が栽培するきっかけになったという。多品種を計17本栽培。オリーブの実のかわいさにほれぼれする渡辺さんだが、昨年は実のなる方の枝を剪定してしまったと苦笑い。「赤っぽいオリーブの実が宝石みたいで本当に綺麗なんです。初めてこんなに実がなっているのを見ることができて感動です」と話してくれた。
また、福岡県福津市から参加した岡崎さん(男性)は、健康のため、オリーブ油を15年ほど前から摂取しているという。自分でも栽培してみたいとの思いから昨年定植し、約140本を栽培している。
10月23日には、生産者でつくる荒尾市オリーブ生産者組合の加工販売部門として「一般社団法人 九州荒尾オリーブ村」が発足した。
今後について「規模拡大でまずは5万本のオリーブを栽培し、荒尾市を産地にしたい」と上園さん。また、「本年度中に空き家となった古家を改装し、加工・販売できる直売所をオープンさせ、6次産業まで取り組んでいきたい。僕たちが基盤づくりをし、若い人たちに仕事や場所を残していきたい」と話してくれた。
(濱村浩史・長迫美沙)