放置竹林解消へ/山都町竹資源利活用協議会(山都町)
■竹粉製造 土壌改良材や飼料に
【上益城支局】「山都町名産の竹を利用し、循環型農業に取り組んでいます」と話すのは、山都町竹資源利活用協議会の川部寛行さん(63)。同町は、県内一の竹林面積(1300ヘクタール)があり、以前はタケノコ生産が盛んだった。しかし、中国産などの安価なタケノコ輸入が進み、国産需要は減少。土地所有者の高齢化も進み、放置竹林が増えている。そこで、同町では竹資源の利活用を目的に、2012年12月に同協議会を設立。同年度の農林水産省の6次産業化モデル事業として、竹を粉上にした「竹粉」の製造販売をスタートさせた。
■根張り良く収量アップ 米は独自ブランドで販売
米・野菜の食味が向上
竹粉1グラムには、2億から10億個の乳酸菌が生息している。そのため、土壌に混ぜれば自然に乳酸発酵し、雑菌の繁殖を抑制するとともに、土壌中の菌種を増やし、作物の根張りを良くする。「竹粉を使用している住民からは、『米の登熟、粒張り、食味が良くなり収量増加にもつながっている』という喜びの声を聞きます」と川部さん。竹粉を使用して栽培した米は、「島木かぐや米」として販売している。また、野菜栽培でも甘味が増し、収量増加が認められている。
養殖魚の餌にも需要
最近では、養殖魚の餌に混ぜてペレット状にした製品の注文が増えているという。竹粉入りの餌を食べた魚は、臭みが少なく、餌が下に沈殿しても排泄物を分解する作用があるため「いけす」に最適と好評を得ている。竹粉を含む餌を食べ育った魚は「かぐや鯛」や「かぐや鯖」として商品化されている。
竹粉の製造に使用する竹は、3年以上のもの。1、2年の若竹は、水分が多いため竹粉には適さない。粉砕には農林水産省の「緑と水の環境技術革命プロジェクト事業」で開発された「高速竹粉製造機」を使用している。国内に3台しかなく低コストで竹を粉砕でき、従来機械と比べ5倍の生産性を持つ。
目標は年間40トン
今後について「うちの営農組合は、20代から40代の組合員が約30人います。この若い世代に負の遺産を残すわけにはいきません。しかし被災した中で、復旧費用を組合員で負担するのは難しい。そのため国や県、市の協力が不可欠です。水田が戻るまでに3年ほどかかると思いますが、みんなで協力し、一日でも早く地震前の状態に戻していきたいです」と話してくれた。
「合言葉は『チリも積もれば山都なる』です。少しずつですが、山都町の将来を見据え、地域にあるものを利用しながら活性化を図っています」と川部さん。
今後については、「まずは、多くの方に竹粉の安全性や無農薬栽培に適していることを知っていただきたい。そのためにも、これから商品PRに力を入れ、パッケージなども考えていきたいです。年間40トンの生産を目標に、これからも頑張っていきます」と話してくれた。 (黒田裕一)